地域の意思表明としての風景デザイン

岡田 一天

 堤防や護岸、樋門などの河川施設のデザインを多く手がけてきた。いうまでもなく、河川施設そのもののデザインの先にある、地域・都市における水辺空間の再構築がねらいとするところであり、どうすれば魅力的な水辺を創り出すことができ、地域の人たちが水辺に集まるようになるかなど、川からのまちづくりを志向してきたわけである。しかし、近年、人びとの日常生活やまちの暮らしとはかけ離れた場所に建造されるダムや水門などの大規模な治水施設のデザインを手がけるようになって少し様相が変わってきた。

 まちから離れた場所に建造される大規模土木構造物は、ある意味可哀想である。人びとの利用に供する直接的な手掛かりが見出だし難い。しかも、周囲の自然的な風景の中にあって、土木構造物自身も「自然」であることが求められやすい。
大規模土木構造物のデザインは如何にあるべきか。

 色々と思いを巡らせた挙句、たどり着いた先が、風景としての地域の意思表明である。ダムや水門などの大規模土木構造物が立地する多くの地域では、できれば、それらの施設を地域の活性化や観光などに活かしたいと考え、様々な計画を練り、パンフレットなどを作ってPRしたりする。
では、土木施設のデザインに携わる者は何をすべきか。

 地域が、土木施設を活かした地域づくりを目指し、多くの人に訪れてもらいたいと考えているのであれば、それに相応しい風景を創り出すことである。風景には、観光パンフレットや看板なんぞよりもよほど雄弁に、『ようこそ』と訴えかける力がある。そんな大規模土木構造物の風景デザインを目指したい。
 何時の日か、訪れた人に“『ようこそ』と言われているような気がした”と言ってもらえることを夢見て。



06 Sep, 2016 | take_A



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