プレーヤー化するコンサルタント

伊藤 登


 建設コンサルタントと呼ばれる業種は、随分と幅広である。構造物の設計から都市計画やまちづくりなど、さまざまな専門領域から構成され、その活躍の場も国から県、市町村と多様である。元々は、行政が直営でやってきたことを、その業務量の拡大とともにコンサルタントが担うようになり、それがあたりまえとなって今日を迎えている。しかし、当社10周年記念誌で予見したように、ここ十数年で建設コンサルタント、とりわけ計画系コンサルタントの実務が大きく変容した。これは計画への住民参加の動きと期を同じくする。


 コンサルタントの限界


 計画系コンサルタントの役割は、計画をつくることであった。以前も行政と市民との役割等の項目は計画の中に記されてはいたが、地区のまちづくり計画のように住民の意思が直接反映される計画づくりにおいては、それが直接の動きとして具現化されることが望まれるようになったのである。また、インターネットの普及により、専門家しか知り得なかった情報を一般の人が簡単に入手できるようになった。我々が知っていることのかなりの部分を、関心のある地域の人は既に知っているのである。どこそこの町では、こんなことをやって成功しているという具合に。
 このような時代になると、コンサルタントには多様なステークホルダーの意見をとりまとめるコーディネート力が問われるようになる。そして、あるまちづくりに力を注げば注ぐほど、愛情がわいて地域のために汗をかくことになる。このような段階に至って、仕事の切れ目が縁の切れ目というわけにはいかなくなってくる。こういったことは、規模の小さなまちづくり系コンサルタントならば、誰しも経験するはずであり、大手の心ある技術者とて個人的心情としてはそうなるに違いない。ここに請負業としてのコンサルタントの限界が存在する。


 いよいよプレーヤーとして


 最近の若者の中には、大学卒業後にまちづくり系のNPOやまちづくり会社に就職する人がいるという。地域の人とともに、ともに何かをするという立場に立とうとするその志には、頭が下がる思いである。これらの人たちの振る舞いは、請負業のそれとは一線を画す。コンサルタントとは、立ち位置が異なるからである。これに気づいて、自らの立ち位置を地域で事業を行う立場に置き換えると、見えてくる世界が大分変わるだろう。
 たとえば、空き家問題ならば、コンサルタントとしての「空き家バンク」等の仕組みの提案から、その仕組みのつくり方や運営方法に、また誰と組んでやるか、事業資金はどのように調達するのか、というように関心事が変わる筈である。また、「公共空間をもっと自由に使いたい」という地域の声に対しては、「こういう制度があるから使用は不可」と答えるのではなくて、「この制度のこの規定を変えていく努力をしましょう」という考え方に変わるだろう。
 空き家問題などは、既存ストックの再利用問題である。かつての鉄道トンネルがワイン貯蔵庫などとして蘇った例もある。今までコンサルタントとして提案したアイディアを実現するプレーヤーとして、コンサルタント自体の再生が求められている。



06 Sep, 2016 | take_A



Share

« Prev item - Next Item »
---------------------------------------------

Comments


No comments yet. You can be the first!



Leave comment

このアイテムは閲覧専用です。コメントの投稿、投票はできません。