まちづくりの総合プロデュース

内藤 充彦

 まちづくりを専門とするコンサルタントにとって、同じ地域のまちづくりに長く、そして広く深く関われることは大きな喜びである。自ら提案したことが実現化する。実践したことが新たな展開を生む。そしてそれにより地域が良い方向に向かっていくことを実感できることは、まさにコンサルタント冥利に尽きる。しかし、行政から委託という形で仕事を請けるコンサルタントにとって、このような機会にめぐり会えることは、必ずしも多くはない。一昔前であれば、担当者の裁量で随意契約できた業務も、随契理由が厳しく問われるようになった昨今、入札やプロポーザルになることがほとんどである。また、行政の担当者は数年単位で部署の異動があり、担当者との信用関係を築けたとしても、その担当者の異動で地域との関係が途切れてしまう場合もある。さらに、まちづくりは都市計画、商工観光、農政、文化財など多方面に関わり、業務内容もハード・ソフトにわたり多様であるが、縦割りが一般的な行政において、これら多方面の分野の多様な業務に横断的に関わる機会を得ることは非常に難しい。
 このような中、当社では福島県桑折町、岐阜県郡上市、群馬県甘楽町など、同一地域のまちづくりに長く、そして広く関わる機会に恵まれた。


古民家改修から「食」の開発まで―甘楽町における多様なまちづくりの実践



 甘楽町の中心である小幡地区には、織田家が開いた城下町の歴史的町並みが残っており、歴史まちづくりを軸に地域活性化を図ることが大きな課題であった。この甘楽町では、ソフト・ハード、調査から設計まで、まちづくりに関わる多種多様な業務に携わることができた。景観計画の策定に始まり、歴史的水路である雄川堰の調査とその価値を紹介するガイドブックの作成、歴史資源を巡るまち歩きマップやサインの整備、まち歩きの案内所・休憩所として活用するための古民家の改築設計、まち歩きの起点となる道の駅と公園の設計、さらにはこの道の駅での提供も念頭に置いた、地域の食材や食文化を活かした新たな「食」の開発等々。これらをひとつのまちづくりとして、互いに関連付けて発展的に実施できたことは、非常に効果的で、実にやり甲斐のあるものであった。


 まちづくりの総合プロデュースのために



 同じ地域のまちづくりに長く関わるためには、やる気に満ちた担当者との出会いといった「運」も必要となるが、質の高い成果で信用を得、地域を良くするために発注者・受注者の立場を越えて語り合える関係を築くことが重要である。そして多様な分野にまたがるまちづくりに携わるためには、人的ネットワークを駆使し、他分野の専門家(甘楽町の例で言えば建築家や料理研究家等)と協働するとともに全体をコーディネートすることも求められる。まちづくりを専門とするコンサルタントには、何かあればすぐに相談が来るような、まちづくりの良き相談相手、頼れる同志になることが求められている。



06 Sep, 2016 | take_A



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