川紀行(ネッカー川)

ドイツの古都ハイデルベルグを流れるネッカー川です.
ネッカー川とそこに架かる古い石橋、ハイベルベルグの中世の街並み、そして街並みを囲む丘陵地とそこにたたずむ古城.
ハイデルベルグを代表する風景.好きな川の風景の5本の指に入る景観です.
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ネッカー川は、単に好きというよりは、実は、私が水辺デザインでもっとも影響を受けた川の一つであり、これまでにも雑誌などに何度か紹介させていただきました.


橋の名前はアルテ・ブリュッケ(ドイツ語で古い橋、イタリア語のポンテ・ベッキオと同じですね)、正式名称はカール・テオドール橋.ハイデルベルグ最古の橋で、以前はご多分にもれず屋根付きの木橋でした.18世紀の末、当時のカール・テオドール帝が現在の石造りの橋に架け替えたものです.ハイデルベルグをこよなく愛したゲーテが「ここから望む眺めには世界のいずれの橋も及ぶまい」と言ったとか.
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ゲーテならずとも橋からの眺めには感嘆します.上流を望むと少し気になる石造りの堰が見えます.この堰の造形がまたすばらしい.ゲーテの時代にはこの堰は無かったと思うのですが、ゲーテがこの堰をみたらなんと言うか、興味あるところです.
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河岸には、ヨーロッパの都市河川ではごく普通の立派な並木の散策路が整備されています.
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河岸をよく見ると、レンガ張りの堤防が何段かに分節されていて各段に人が佇むことができる設え.水面との様々な比高で川の風景を楽しむ仕掛けになっている.そして、これらの段が絡み合って、全体として豊かな表情の堤防を生み出している.
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多段の堤防が整備できない区間では、堤防の足元にやや急勾配ながら漸次的に変化する芝の斜面が組み込まれ、堤防の高さ感を緩和している.そしてそこには、急な勾配にも関わらず、多くの人が寝転び、腰を下ろしている.芝の斜面は5割位の勾配でないとといった既成概念が吹っ飛びます.
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もう少し下流にくだると、ヨーロッパの川では珍しい引き込み型の低水護岸が整備されている.「あそこの水辺に行ったら気持ちが良いだろうなぁ」という仮想行動、親水象徴をまさに絵に描いたような整備.引き込みの袂に植えられている1本の高木がまた素晴らしい.親水象徴を実感した風景でした.
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右岸の丘陵沿いには哲学者の道と名付けられた散策路が整備されている.実はハイデルベルグはドイツ最古の大学が設立された大学の町でもあります.大学の名はルプレヒト・カールス大学ハイデルベルグ、通称ハイデルベルグ大学.この大学で教鞭をとった学者や研究者、先のゲーテやヘーゲルがこの道を歩き思索にふけったそうです.散策路のそこかしかにはベンチなどが設けられ、今でも多くの人々が散策を楽しんでいます.散策路の一角には花々で彩られた小さな見晴らし園地.まさに視点場整備のお手本です.実は、最初のネッカー川と、古い石橋、ハイデルベルグ城の風景はこの視点場からの眺めです.ちなみに、京都の疎水沿いの哲学の道はこの道がモデルとか.
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20 Aug, 2012 | 1ten



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