これからのコミュニティ ― 新しい「縁」の結び方

鈴木 紀子

 我々はこれまで、土木施設の整備や景観形成、自治体の各種計画策定などに取り組み、その過程で開催されるワークショップや座談会などで地域の人々と関わってきた。その中で心がけてきたのは、地域から挙がった声のままに形をつくるのではなく、地域にとってより良いカタチ、ベターな解決策を考え抜こうという姿勢である。コンサルタントとして行政により近い「公」の側に立ち、「共」やその先にある「私」のための空間や仕組みを調えることにより、地域の活性化に取り組んできた。

 古いけれども新しい“コミュニティ”



 地域コミュニティは、遡れば農耕が始まったころのムラ、町内会などの自治組織、結い・ゆいまーる等の産業にも関わる共同体、神社の氏子会や寺院の檀家会など、多様なルーツや目的のもとに、時代の変遷や暮らしの変化に応じて変容してきた。近年では、コミュニティの活性化を主眼とした取り組み事例も増え、コミュニティ・デザインなる言葉もメジャーになりつつある。


 「縁」と「共」



 PNに籍を置き、業務に取り組むとき、「縁」と「共」、この二つの文字が持つ意味をいつも考えた。
 既存の「縁」としては、家族や親族の“血縁”、町内会や学区などの“地縁”、企業では“社縁”などがある。より良い「縁」のあり方を提案することが地域づくり業務の目的のひとつともなる。
 「公/共/私」と区分すれば、「公私」の間に「共」が存在し、その「共」には、空間が該当する場合もあれば、人が担う役割である場合もあった。
 「縁」と「共」というふたつの要素から「コミュニティ」を定義づけるなら、「縁を共にするための場」であり、さらに平たく言えば「人と人とが結びつく場」ということになろう。


 新しい「縁」を結んでいくために



 地縁や血縁による既存コミュニティには機能していないものも多い。しかし、趣味のグループやインターネット上、あるいはネット発祥のリアルなつながりなど、人と人とが結びつく場は依然として存在し続ける。そうした場があるからこそ可能な情報の共有や体験、楽しみがそこにはあるからだ。
 コミュニティの必要性を問われたなら、「豊かさのため」と答えたい。人と交流することで実感できる豊かさがあり、その場に備わる豊かさが、個々人の豊かさにつながる。その反対に、人々が豊かさを持ち寄れば、その場全体も豊かになっていくはずだ。
 「○○つながり」という言い方がある。「○○」に入るのは、仕事、趣味、学校、子供、酒 ― つまりはなんでもアリ。しかし、建設コンサルタントという立場のままでは、当然限界がある。そこを突破するには、自らがコミュニティづくり ― 縁結びの場をつくっていけばよいのだ。既存のコミュニティやそれまでのやり方に縛られず、あらゆるつながりの可能性を探りながら、縁の枝葉を自在に広げていく ― 新しい縁の結び方を提案し、自分もそれに混じって活動していけたらと考えている。



06 Sep, 2016 | take_A



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